東京文化財研究所 > データベース・資料 > 国宝 絹本著色十一面観音像 奈良国立博物館所蔵

奈良国立博物館・東京文化財研究所共同研究成果報告
《国宝 絹本著色十一面観音像》


基礎データ
画像
蛍光X線分析
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部分 拡大図版(カラー画像・図75~106)

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なお、拡大画像の下辺と右辺にめぐらされた白黒の縁取りは、白黒各々の幅が1mmであることを示しています。

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 上下図とも頭上面の顔の画像である。上図の白色部分からはPbが検出されており、鉛白(2PbCO3・Pb(oh)2) などのPb系白色顔料による彩色であることがわかる。下図でもPb系白色顔料が用いられているが、赤みがある部分からは少量のHgが同時に検出される。Hg系赤色顔料の辰砂が用いられていると考えられる。ここには写っていないが、下図の顔の鼻部分からはPbが検出されず、Caが多く検出された。異なる白色材料による彩色が施されている。

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 上図は頭上面化仏である。画面上に金と緑色の粒子を確認することができる。蛍光X線分析でもはっきりとAuとCuが検出されている。Pbも同時に検出されており、Pb系白色顔料も存在している可能性がある。


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 上図は白毫、下図は赤色の唇部分の画像である。上唇と下唇でわずかに赤色の色調が異なっていることを確認することができる。蛍光X線分析では上唇・下唇ともにHgとPbが検出されるが、濃赤色部分ほどHg/Pb比が大きくなる傾向が得られた。Hgは赤色顔料としての辰砂、Pbは白色顔料としての鉛白に由来するものと考えられる。
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 上図は左眉、下図は左目の画像である。上図では眉が上下二色に異なる色で描かれていることがわかる。上側は粒子をほとんど確認できない黒色であるが、下側は粒子感のある緑色である。蛍光X線分析では緑色部分からCuを検出し、緑青が用いられていることを支持する結果が得られた。同時にPb、Hgも検出されたが、顔に塗られている薄赤色部分に由来するものである。下図では目尻に緑色、黒目周囲に赤色を確認することができる。蛍光X線分析では緑色部分からCuを、赤色部分からHgを検出した。それぞれ緑色顔料の緑青、赤色顔料の辰砂に由来するものである。

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 赤色の色調の違いが観察できる。蛍光X線分析ではHgが主成分として検出され、赤色顔料の辰砂(HgS)が使われていることがわかる。少量のPbが同時に検出されており、鉛白(2PbCO3・Pb(oh)2)などのPb系白色顔料が同時に存在していると考えられる。赤色の色調の違いは、Hg、Pb検出量の違いとして測定される。濃赤色部ほどHg検出量が大きく、Pb検出量は小さくなる。截金文様に使われているAuも同時に検出されている。Agはほとんど検出されていないが、Cuが微量に検出されており、Auの不純物の可能性がある。
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 赤色の色調の違いが観察できる。蛍光X線分析ではHgが主成分として検出され、赤色顔料の辰砂(HgS)が使われていることがわかる。少量のPbが同時に検出されており、鉛白(2PbCO3・Pb(oh)2)などのPb系白色顔料が同時に存在していると考えられる。赤色の色調の違いは、Hg、Pb検出量の違いとして測定される。濃赤色部ほどHg検出量が大きく、Pb検出量は小さくなる。截金文様に使われているAuも同時に検出されている。Agはほとんど検出されていないが、Cuが微量に検出されており、Auの不純物の可能性がある。

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 上図、下図ともに下裳の截金文様部分の画像である。下図では截金文様の下層に橙色の彩色が認められる。この橙色材料はPb系赤色顔料の鉛丹であると思われる。
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 上図は裙の文様部分、下図は台座・下敷茄子の文様部分の画像である。上図では截金文様の下層に橙色の彩色を認めることができる。蛍光X線分析では、これらの箇所からAuとともにPbが検出される。Hgはまったく検出されない。Pb系顔料の鉛丹が用いられていると考えられる。

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 蛍光X線分析では截金文様部分からAuが大きく検出される。Agはほとんど検出されないが、微量のCuが同時に検出されている。また、Pbが少量検出されるが、上図では白色の材料を確認することができ、これに由来している可能性がある。
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 濃茶色として認識できる身光圏帯部分でも、上図では緑色の粒子を確認することができる。蛍光X線分析でもはっきりCuが検出されており、緑色の色料が存在していることがわかる。

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 現在、黒色として認識できる瓔珞には、上図で青色の粒子を確認することができる。蛍光X線分析ではCuとともに少量のZnを同時に検出した。藍銅鉱を原料とする群青に近い組成であると思われるが、構造式の異なる青色顔料が使われている可能性がある。Agはまったく検出されていない。
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 現在、黒色として認識できる条帛(上図)および暗青色として認識できる宝珠(下図)部分の図である。詳細に見ると、微量ではあるが青色粒子の存在を確認することができる。蛍光X線分析では両箇所ともに、わずかではあるがCuを検出した。青色顔料の存在を支持する結果である。両部分からAgはまったく検出されていない。上図では粒子の細かい材料で絹目が埋められていることがわかる。これは肉身部の彩色に由来するものであり、蛍光X線分析ではPbおよびHgが検出されている。

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図100 図版8参照
 上図は紫色に見える瓔珞、下図は褐色に見える碗釧の画像である。両図とも周囲の白色部分とほぼ同じ粒子が使われていると認識することができる。これらの部分に他の色の粒子は確認することができない。蛍光X線分析では両部分からPbとCuが検出されている。Pbは白色材料として使われている鉛白に由来するものである。紫色や褐色の部分に青色や緑色の粒子を確認することはできず、Cuの由来については不明である。
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図102
 上下図とも天蓋・竜胆の葉の画像である。両図とも青色の粒子を確認することができる。画面の中には緑色粒子も確認できる。蛍光X線分析では両箇所ともにCuが主成分でZnが少量検出された。Cu/Zn比は両箇所ともほぼ同じである。青色顔料の群青ないしはそれに近い構造式を持った青色顔料が使われている可能性がある。

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図103

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図104
 上図、下図ともに竜胆の花付近の画像である。竜胆の花の暗青色と銀黒色の細線を認めることができる。蛍光X線分析では暗青色の箇所からCuがほとんど検出されず、群青は使われていないと判断できる。銀黒色部分からは微量ではあるがAgを検出した。
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図105

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図106
 上図は竜胆の花付近の截金文様、下図は彩色が認められない部分の絹地の拡大画像である。上図では截金文様の周囲に緑色の粒子を確認することができる。銀黒色部分からは微量ではあるがAgが検出される。
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